ビジュアル ビジネスモデルがわかる
(井上達彦著 / 日経文庫新書)
ビジネスモデルの捉え方は日々成長する、より心理学的思考へ、狭義から広義へ、常識外へ
Amazon 日経文庫でのベストセラー(1位)になっています!
冒頭からドキッとさせられました(汗)。
あなたの会社は大丈夫か?
→ 大丈夫ではないですね(汗2)
18項目のセルフチェック、まずはここで喉元にナイフを突き刺された印象です。古い体質の会社は新しい取り組みも遅れているとの指摘は的確です。
→ あとがきに、「最近の学生は伝統的な大企業を選ばない!」
→ それは日頃から感じていることでもありました。
ビジネスモデル とは、
どのようにすれば会社がうまくいくかを説明するストーリー
従来の狭義の稼ぎ方を「収益モデル」として使い分けしている。
→ 「収益モデル」をビジネスモデルだと勘違いしていないか?
→ 選択バイアスに陥っていないかの指摘も的確!
本書は見開き2ページでまとめられており、左ページが説明、右ページが図表となっています。読みやすさもさることながら、理解しやすい仕組みになっています。専属デザイナーの方も監修に加わっているとのことで、それ故に本書の構成レベルが高いわけです。
更に本書は、OJC(on the Job Collaboration)の視点で作り上げられています。実践的・研究的・教育的視点を兼ね備えているところが素晴らしいです。
ビジネスモデルの構築を、過去の処方から現在にかけて、どのように変わっているかを解説、変化のポイントが分かりやすく述べられています。
SWOT分析:伝統的な事業創造のパラダイム
→ 創造的であっても飛躍は許されない
ビジネスの機会が全て数値化できない
顧客洞察アプローチ:データから人への心理(共感)探究へ
→ 弱点はデータの裏付けに乏しいところ
パターン適合アプローチ:パターン化されたものを模倣する
→ お手本となるパターンを見つけることは容易でない
→ パターンを見いだすピクト図が有用(事業構造分析に使える!)
→ 抽象化と具体化のロジックから汎用性、理論展開を導く
→ パターンが先入観に繋がり、独創性を阻害する可能性は残る
ここまでを頭に入れたうえで
ビジネスモデルの6つのパラダイムシフトを考える流れになっています。
(1)伝統手法からリーンスタートアップへ
緻密な計画からビジネスモデル探索重視に(無駄を省く)
注)稼ぎ方の視点を「収益モデル」として区分けして考える
(2)自前主義からオープンイノベーションへ
収益回収できない研究開発費への対応(クローズドイノベーションの崩壊)
(3)価値連鎖からプラットフォームへ
価値連鎖から好循環を生み出す新たな価値創出へ(ネットワーク効果)
マイケル・ポーターの価値連鎖の考え方は既に古く、
価値連鎖にラットフォーム的思の組み込みが必要!
イノベーションプラットフォーム(生産の補完性モデル)
取引プラットフォーム(供給と需要の結合モデル)
→ 組み合わせのハイブリッドプラットフォーム → 付加価値増へ
(4)売り切りからサブスクリプションへ
現状ビジネスの主流と言える、モノ余りの昨今、売り切りでは儲からない?
伝統的製造業でのサブスクリプション成功モデルは構築できるのか?
→ ネットビジネスでのイメージは容易であるが
→ 例えばインフラ製品、寿命が長いこと(超信頼度)をどうつなげるか?
(5)有料からフリーへ
コア製品を無料にし、周辺で利益を上げる(内部相互補完)
(6)所有からシェアへ
「所有」する欲求が低くなった消費者心理
ネット普及による個人間取引の増加が承認欲求を満たす
<本書を読んで感じたこと>
・ 消費者の視点が変化「所有」→「利用(体験)」に移っている。
・ モノ余りの時代では従来の価値連鎖モデル(マイケル・ポーター)だけでは成り立たないビジネス環境に変化し、
ここにネットワーク効果を織り込まなければならない。
・ 製品付加価値が変わっており、経済効果をものの売り上げだけで議論することは危険。
・ 経済効果の算出には、ビジネスモデルのパラダイムシフトを加味した見えない部分の取り込みが必要。
ビジネス全般のコスト構造が見えにくく、お金の流れが外から分かりにくい。
これらがビジネスモデルの変化に伴う経済効果分析の難しさに派生している。
・ 昨今のデジタル革命は「非接触経済」、これがコロナ禍の状況に偶然にも(運良く 運悪く)重なってしまった。
パラダイムシフトがコロナ禍で加速、従来以上に変化への対応が重要になっている。
ただ、人がその変化に追従できていない事実もある。
いずれにせよ、これだけコンパクトンなページ数に絞られていますが、論点にズレがなく、入門書とは言い切れないビジネス書だと思います。
2021年06月07日 17:02
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