血族の王: 松下幸之助とナショナルの世紀
(岩瀬達哉著 / 新潮文庫)
これまでの書籍とは異なる幸之助の人間臭さを体感できる!
今まで読んだ数々の松下幸之助関連書籍とは異なる視点からの切込みで,
幸之助翁の負の部分にも焦点を当てています.斬新さを感じました.
表題にパナソニックではなくナショナルを用いたことからも,
筆者の意図が伺えます.
この書籍執筆の特徴は松下電器やPHP研究所の資料に頼らず,
筆者自らの調査記録に基づく幸之助翁の記録をまとめているところです.
松下関係部門に協力を仰ぐと,出身母体の影響から真実が美化されるからです.
筆者は,真実がきれいごとばかりではないことを述べたかったようです.
特に注目して読み進めるところが,
・義弟,井植敏男の独立(三洋電機設立)時の人間模様
・PHP 設立までの晩年期においても,激しく経営に固執した事実
→ 娘婿正治と山下俊彦社長との確執
・東京妻(30歳年下)の存在を明記
→ 義弟井植敏男にも第二夫人がいた事実(成功者の証)
・孫である松下正幸への家督相続への執念
美化されがちの著名人の伝記には,泥臭さ,人間臭い真実が表現されにくく,
どんな偉人であっても神様ではない,ヒトとしての裏側があることを本書から知ることができます.
経営の神様と言われた幸之助翁の真のイメージを再構築することができ,
これまでの幸之助伝説とは違った視点からパナソニックの歴史を顧みることができます.
幸之助観を改めさせる(良い悪いの両面から),素晴らしい書籍だと思います!
2019年07月04日 19:51
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